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Guy with Coffee Mug

備忘録を兼ねて,購入品のレビューを綴るブログ.

コラム:ボールペンの選び方 (2) --低粘度油性ボールペン編

前回記事の続きです.

低粘度油性ボールペン

簡単な歴史

三菱鉛筆社は, 2006年に「ジェットストリーム」という,新開発の低粘度な油性インクを搭載したボールペンを発売しました.その滑らかな書き味のインパクトは絶大で,油性ボールペン市場を,あっという間にジェットストリーム一色に塗り替えてしまいました.ボールペン史における革命と言っても過言ではないでしょう.これを契機に,主要各社も後を追うように,低粘度な油性ボールペンの開発・販売し始めます.現在では各社から似たようなコンセプトの商品が販売されています.これらは,一般には「低粘度油性ボールペン」と呼ばれるようです.

特徴および長所短所

低粘度油性ボールペンは,溶剤の配合が大幅に変わっているため,インクの性質も結構変わっています.特徴は下記の通り.

  • 低筆圧で書ける
  • 滑らかな書き味
  • 発色が従来油性より優れる
  • 各社の主力商品
  • 多くは顔料が配合されている
  • 水に配合成分の一部が滲む
  • 従来の油性に比べ高価

ジェットストリームでは,ボール径が0.7mmの場合,30〜40%程,筆記摩擦が低減されているそうです*1

 そのため,低筆圧で滑らかに書くことができます.さらに,インクの発色も従来油性よりもはっきり濃くなっています.低粘度油性ボールペンのインクの多くには,顔料が配合されているため*2,耐水性はもちろん,耐光性にも優れます.ただし,従来油性は水に全くにじまないのに対し,低粘度油性はおそらく成分の一部がにじみます.もちろん,読めなくなるということはないので,気にする必要はないでしょう.

歴史の項でも言いましたが,従来油性よりも低粘度油性のほうが,今となっては各社の主力商品となっているので,入手性は低粘度油性ボールペン(というよりはジェットストリーム)の方がよいです.両者を店頭で試し書きしたときに,圧倒的に低粘度油性のほうが滑らかで筆跡も濃くきれいに見えるので,低粘度油性の方が売れるのは致し方なしでしょう.価格は低粘度のほうが高い傾向にあります*3

このように書くと,従来油性の存在意義が無いように思われるかもしれませんが,そんなことはありません.次の項で,従来油性と比較しながら,最適用途について考えましょう.

最適用途について--従来油性と比較して--

低粘度油性は摩擦抵抗が小さいため,筆記時にペン先が滑りやすく,精密にコントロールしにくくなっているので,従来油性ほど,複写式書類の記入には向きません*4.さらに,ツルツルな紙(一般に高級紙)や,硬い机の上に紙一枚のような状況*5も大変厳しいです.したがって,一般的には,摩擦抵抗の高い状況では低粘度油性,そうでない場合は,従来油性ということになります.例えば,コクヨのキャンパスノートは比較的ザラザラした紙質なので,低粘度油性ボールペンは滑らかに心地よく書けるのではないでしょうか.このあたりはボールペンや個人差が大きいことなので,実際に試してみないことにはわからないというのが正直なところです.

発色とカラーバリエーションに関しては,低粘度油性の方が明確に良いです.様々な色を使いたい,赤色でコピー用紙の印刷物の校正をする用途では,低粘度油性ボールペンが適していると思います.

 低粘度油性のインクは,基本的に顔料成分が配合されているため,従来油性よりも筆跡の耐久性は優れるといっても間違いはないですが,最適用途を考える上では,微妙なポイントになります.先の項でも触れた通り,低粘度油性インクは耐光性に優れますが,水に配合成分の一部が溶け出すようなので,耐水性については,若干難ありです(高湿度の環境下で書類を重ねた場合,別の紙に裏写り(転写)してしまわないか,など).結論としては,従来油性と同様に,記入書類の長期保存にはそれほど向かないといえるでしょう.

代表的製品

主要メーカーの代表的な製品を以下の通りです.

ジェットストリームは低粘度油性ボールペンの爆発的普及のきっかけを作った始祖でありながら,最高の完成度を誇るシリーズだと思います.どこにでも売っています.

アクロボールは,ジェットストリームよりも若干ですが,摩擦抵抗を感じるような気がします(目隠ししたら,わからないかもしれない程度です).従来油性の面影が僅かに感じられるので,人によってはアクロボールの方を好むかもしれません(私はそうです).余談ですが,低粘度油性かどうかはわかりませんが,かつてA-inkというものもありました.*6

ビクーニャは,上二つと比べてさらに低粘度で,独特の筆記感が面白いです.紙に書くというよりは,インクを紙に塗りたくる漢字で,私は好きです.ただし,インクの消耗が早く,べたつく感じがあるのが難点.郵便局に備え付けのペンは,ビクーニャだと思います.最廉価モデルが定価\100円と安い.

スラリは,独自の「エマルジョンインク」採用を謳っていますが,低粘度油性に分類して問題ないでしょう.基本的には,ジェットストリーム・アクロボールと同様です.ビクーニャと同じく,定価\100円と安いのが特徴でしょう.

まとめ

低筆圧で濃い筆跡を書きたい場合,摩擦抵抗の高い紙への筆記,カラーインクを使いたい場合,などに低粘度油性ボールペンは適しています.個人的なおすすめは,パイロット社のアクロボール.価格を気にしないなら,Caran d'Ache 888 inifinity もおすすめです.

第3回へ続く.

*1:http://www.mpuni.co.jp/products/ballpoint_pens/ballpoint/jetstream/standard.html

*2:少なくとも,ジェットストリームについては,顔料が配合されていることが,同上サイトに明記されています

*3:例えば,楽ノックが定価\100円に対して,ジェットストリームスタンダードが\150円と50円高いです.

*4:実は郵便局では低粘度油性のぺんてるビクーニャ採用ですが…

*5:従来油性でも厳しいですが,低粘度油性は,少なくともジェットストリームの場合は,それ以上に厳しく感じます.

*6:かなり前(10年ぐらい前?)の話ですが,Dr. Gripに搭載されていたA-inkというインクも滑らかで書き心地がよく,好んで使っていました. 今にして思えば,A-inkも低粘度油性だったのでしょうか? 現在では,A-inkは全て,アクロボールと同じアクロインキというものに置き換わっているため,検証できないのが残念です.